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           小説『永遠の0』

       ~涙のシーン・セレクション~

 

 「永遠の0」を知ったのは「東野幸治が泣いた小説」ということからでした。ですから映画化が決まった時も内容はたいして知らずに「面白いんだろうな」程度で観に行こうとしていました。しかし2013年末、足を骨折しまして入院を余儀なくされ、ちょうど映画の公開がされた時だったため、「じゃあ小説で…」と読み始めました。初めは「長いなぁ」と思っていましたが、読み進めていくうちに「ヤバイ、あと100ページで終わってしまう」と貴重な退屈しのぎになっていました。戦争の、戦地での状況を、元兵士だった老人に、当時を振り返ってもらうという話。でも語りが上手いんすよ。だから段々話に巻き込まれていくのです。一歩引いた感想としては「日本人は戦争に向いてないんじゃないか?」と思いました。何にせよ戦争はダメです。やらないに越したことはありません。

 

 そんな入院中に読んだ「永遠の0」の印象に残ったシーンを抜粋してみました。ですから、そのページだけを読んでも泣けるものではありません。また今読めば「なぜここで感動したんだ?」と首を傾げてしまう箇所もありました。

 

 小説が良いか悪いかは分かりませんが、僕はこういった感性に訴えてくるような話は好きなのです。

 

 

Scene 1

 「いいか、よく聞け。時間があれば休め。たっぷり食べて、とにかく寝ろ。どれだけ休めるかが戦いだ」P214

回想…

 ラバウルからガダルカナルへ出撃する後輩に宮部が言うセリフです。この言葉には入院中何度も救われました。食欲がない時、眠れない時などこの言葉を思い出して「ラバウルからガダルカナルへ飛んでった飛行機乗りに比べれば」と頑張れました。

 

Scene 2

 「ゼロのパイロットはすごかった。これはお世辞ではない。何度も機体を穴だらけにされた俺が言うんだ。本物のパイロットが何人もいた」

 「ラバウルの空で死んでいった仲間たちが今の言葉を聞けば、喜ぶと思う」P231

回想…

 アメリカ兵が戦争当時を振り返って、日本兵を褒めるシーンです。「あなたは殺されかけたのではないですか?」に対し「戦争なんだから、しょうがない」と返すアメリカ兵。この辺からも戦争に対してアメリカは、もっと考え方がシビアだったように思います。

 

Scene 3

 「お前、生きてたのか」

 「谷川さんもご無事で」P311

回想…

 ここもグッときました。お互いに戦火を生き残ってきた者同士が、偶然出会うシーン。読んでいて不思議と共感してしまいました。のめり込んで読んでいましたからねぇ。

 

Scene 4

 心の中で何度も謝った。P336

回想…

 特攻は上官の強制みたいなものだったんだと、改めて知りました。これは地元に恋人を残してきた特攻兵の心境です。

 

Scene 5

 「職業軍人とは何とひどい言葉でしょう。日本のために命懸けで戦ってきた人を、まるで銭儲けで戦ったように言うのは、絶対に許せません」P357

回想…

 この言葉で思う事は、権力者が力を振るっている時は、そいつを支持するくせに、一旦力が弱まると手のひらを返す。何とも人間らしい一面で気持ち悪くなります。経験があるような無いような…。

 

Scene 6

 俺は声の限り叫んだ。ただもう訳も分からず叫んでいた。日本など負けろ!帝国海軍は滅べ!軍隊など消えてなくなれ!そして軍人はすべて死ね!P499

回想…

 ここは山場でした。泣きました。「永遠の0」の中ではこの「阿修羅」が一番グッときます。このヤクザの証言、ヤバいです。で特に涙腺を崩壊させたのが上記の一文です。向けようのない怒りの部分で共感したものと思います。もちろん戦地に赴いた方々と同じ感情ではないですけどね。

 

Scene 7

 「私は汚い男です」P563

回想…

 このセリフは「来るだろうな」と踏んでいたら、やっぱり来た!!という感じでしたが、セリフが予想できたにもかかわらず、涙が出てしまいます。この人の、この時の気持ちが手に取るように伝わってくるのです。だからこのセリフを言った時はもう、この人は自分なんじゃないかっていう錯覚が起こって、涙が出るのです。

 

Scene 8

 「全身に返り血を浴びたその男は、震えて動けない松乃に財布を投げ、生きろ、と言ったというんだ」

回想…

 最後の最後でやってくれます。あのヤクザ、格好良過ぎです。戦後間もなくというのは人の心も慌ただしく、まさに混乱していたものに思います。その混乱にも当てられず、信念を貫いたあのヤクザは、間違っているけど、正しいという矛盾を行動で示してくれます。

 

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